発電所で作られた電気は、送電による電気の消失を減らすため一旦50万ボルトなどの高電圧にして送電線で送られる。変電所は、その高電圧の電気を家庭や工場で使える電圧に変圧・調整している。砺波変電所から送電しているお客さまはおよそ10,800戸あり、点検といえども、簡単に電気を止めて実施することはできない。北陸電力にはおよそ200箇所の変電所があり、月1回の日常巡視や定期点検を実施しているが、常に6万〜50万ボルトの高電圧の電流が流れているため、変圧器に登っての点検はできない。電気を止めて定期的に点検できるのは6年に1度。それは「絶対に異常を見逃すことができない」ということを意味するプレッシャーのかかる大切な点検作業だ。
初夏。陽ざしがジリジリと強さを増していくなか、砺波変電所で2号変圧器定期点検が実施された。点検は、機器類の清掃作業から始まる。6年の間に付着した水あかやホコリなどの汚れは、放っておくと高電圧の電流が汚れを伝って地面に流れ、停電に繋がる可能性がある。また、わずかなサビでも変圧器そのものに穴をあける原因になる。汚れを落とす作業を丁寧に行いながら、細かなキズや破損などの小さな異常がないか確認し、見つけた場合は補修する。
「点検で最も必要とされるのは判断力です。過去のトラブル事例などがすべて頭に叩き込まれていないと、変圧器などの各機器の状況や数値データを見ても、それが正常なのか異常なのか判断できません。膨大な点検項目をただ機械的にチェックしていくだけでは小さな異常を見逃しかねません。」
6年前の点検時に記録した機器の様子やデータと比較して変化が無いか、細かな部分まで一つひとつ着実に確認をしていく。「どんな小さな異常も見逃さない!という心構えが大事です。わたしたちの仕事は、トラブルを未然に回避することですから」と、入社18年目の点検責任者はいう。また、電気を止めての点検は、若手を技術指導する上でも大切な機会。実際に機器を見て触れながら全ての知識を伝えていく。技術継承も責任者としての大事な役目なのだ。
万が一、異常が発生すれば、昼夜を問わず直ちに現場へ駆けつけて復旧する変電保守課員。「変電所の異常による停電は、とても規模が大きいものになります。毎日が緊張の連続ですが、お客さまにとっては、電気が届いて当たり前。その当たり前を守っていきたいんです」。緊張と戦いながら、わずかな異常でも早期発見・早期復旧し、停電などのトラブルを未然に回避するという強い思いが真剣な眼差しの奥にはっきりと見えた。
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