プレスリリース・記者会見

「2021年度決算」松田社長会見要旨

2022年4月27日
北陸電力株式会社


 本日は、大変お忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。日頃、皆さまには、当社の事業運営に格別のご高配を賜り、厚くお礼申しあげます。 

 まず、お手元の資料1「2021年度決算について」をご覧いただきたいと思います。
 はじめにスライド1の「販売電力量」ですが、小売販売電力量は、280億8千万kWhと、前年度に比べ21億4千万kWhの増加となりました。これは、電灯が、春先の空調需要の減少などにより減少した一方、電力が、工場の操業が前年に比べ増加したことや、契約電力が増加したことなどにより増加したものです。
 また、卸販売電力量は、80億8千万kWhと、前年度に比べ14億6千万kWhの増加となりました。これは、卸電力取引所等への販売が増加したことによるものです。
 この結果、総販売電力量は、361億6千万kWhと36億kWhの増加となりました。 

 次に、スライド2の「連結決算概要」をご覧ください。
 連結売上高(営業収益)は6,137億円と、前年度に比べ256億円の減収となりました。これは、今年度から、会計規則の改正により、再エネ特措法賦課金、交付金が(1,078億円)売上高に計上されなくなったことによるものです。
 なお、この会計規則の改正による影響を除くと、連結売上高(営業収益)は実質822億円の増収となります。
 また、連結経常利益は176億円の損失となり、前年度に比べ299億円の減益となりました。これに、渇水準備引当金を176億円取崩し、インバランス収支還元に伴う特別損失を12億円計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は68億円の損失となり、前年度に比べ136億円の減益となりました。このように大幅な減益となったことを大変重く受け止めております。
 2021年度の期末配当については、こうした厳しい経営状況を踏まえ、3月に公表したとおり、1株につき2円50銭といたします。
 年間配当が15円から10円となることについて、株主のみなさまやステークホルダーのみなさまには大変申し訳なく思っておりますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
 
 続いて、スライド3で、前年度からの連結経常利益の変動要因について説明いたします。
 まず、総販売電力量の増加により、130億円程度の収支好転、経費全般にわたる効率化などにより、50億円程度の好転となった一方、主に定検による設備関連費の増加により、50億円程度の悪化、第4四半期の渇水により、70億円程度の悪化、再エネ交付金の減少などによる購入電力料の増加で、80億円程度の悪化石炭価格の高騰に際し、燃料価格の固定化など価格高騰影響を抑制したものの、280億円程度の悪化となり、連結経常損失が176億円となったものです。
 なお、3月に公表いたしました業績予想値(連結経常利益Δ200億円)からは、販売電力量の増加や、購入費用の減少など、20億円程度の収支好転はありましたが、ほぼ同程度の利益水準となっております。 

 石炭価格の高騰影響については、別紙「燃料諸元の価格推移について」の石炭価格推移 をご覧ください。
 連結決算概要の「主要諸元」でお示ししておりますとおり、石炭全日本CIFは2021年度の平均が159$/tと前年度と比べ80$/t程度、大幅に上昇しております。
 これは、世界的なカーボンニュートラル推進を起因とする化石燃料への上流開発投資減などから、需要と供給のバランスがタイト化し、今年度に入って高値基調で推移してきたところ、本年2月末からのウクライナ情勢の影響などにより、さらに高騰しております。原油価格も同様です。
 全日本CIFは豪州炭スポット価格から遅れて反映されます。さらに、全日本CIFを指標とする燃料費調整額は豪州炭スポット価格から約半年程度遅れて反映されることになり、燃料価格高騰局面では燃料費調整額の期ズレ(後送り)として連結経常利益の低下となります。
 先ほど連結経常利益の変動要因として、石炭価格の高騰による影響として280億円程度の悪化と説明いたしましたが、これは、ヘッジにより燃料費の固定化を実施したものの、燃料費が価格差で600億円程度増加し、そこから燃料費調整収入の増加320億円程度を差し引いたものです。この280億円程度の悪化は、ほぼ燃料費調整額の期ズレ[燃料価格上昇と電気料金への反映の時期の差]による影響であります。

 また、本年2月以降、燃料費調整収入が制度上の上限価格に到達しており、2021年度の収支悪化として数億円の影響があり、高値水準が継続した場合、上限価格到達による収支悪化の拡大が懸念されます。
 燃料費調整制度は、国のルールに基づくものであり、現在、当社を含む電力5社が上限到達となっております。これらの状況を踏まえ、今日的な制度見直しの議論が開始されており、その動向を注視してまいります。別紙「燃料諸元の価格推移について」は以上です。  次に、スライド4の「2022年度業績予想および配当予想」について説明いたします。
 まず、総販売電力量については、ウクライナ情勢等による不透明感がみられる中で、景気下振れの懸念があることなどから、昨年計画並みの330億kWhとしております。
 また、売上高および利益項目については、燃料価格が高騰し、また、変動が著しく、今後の動向が見通せないため、「未定」としております。 

 次に、2022年度の中間および期末配当についてですが、業績予想を「未定」としており、今後の収支や財務状況等を勘案のうえ総合的に判断する必要があるため、配当予想についても「未定」としております。
 2022年度に入ったわけでありますけれども、ウクライナ情勢が深刻化しておりますし長期化の懸念もあります。燃料価格が、これまでにない水準で高騰いたしております。引き続き厳しい状況が続くと予想されるところであります。
 まさに、通常時ではない、異常時の認識と考えております。電力の安定供給に万全を期すとともに、緊急経営対策本部を立ち上げ、これらをフル活動し、あらゆる施策、計画のゼロベースでの見直しを徹底し、さらなる経営の効率化を図って参りたいと思っております。2021年度決算についての説明は以上です。

 次に、当社および北陸電力送配電株式会社の役員等人事についてご説明いたします。お手元の資料3をご覧ください。
 本日開催の取締役会において、役員等人事について次のとおり内定しましたのでお知らせいたします。当社の役員等人事については、6月28日開催の第98回定時株主総会および株主総会終了後の取締役会を経て、正式に決定する予定です。また、北陸電力送配電株式会社の役員人事については、6月29日開催の同社の第3回定時株主総会および株主総会終了後の取締役会を経て、正式に決定される予定です。 
 
 本日の取締役会において、社外取締役を除く取締役および常務執行役員を対象とした「業績連動報酬制度」を本年4月から導入することを決定いたしました。
 現在、役員の報酬につきましては、賞与は2011年度分以降不支給であり、固定の基本報酬のみとなっておりますが、その一部を業績連動型に移行させることにより、役員報酬と業績との連動性をより高めることで、役員が危機感を共有し、この非常に厳しい経営環境に対処していきたいと考えております。具体的な指標については、「連結経常利益」と「個人業績」に基づき、決定することとしております。
 なお、2021年度分についても、引き続き役員賞与を支給しないことといたしましたが、本制度の適用により、取締役平均で更に5%程度の減額となる予定です。
 
 続きまして、資料4「長期ビジョン達成に向けた北陸電力グループの取組み(2022年度)」について説明いたします。
 現在、国際情勢不安を背景に、エネルギー市場が不安定化しております。ロシアによるウクライナ侵攻等、国際紛争を背景とする燃料・電力価格の急高および燃料調達環境が非常に悪化しております。
 一方、我々を取り巻く中長期的なトレンドとして、エネルギー情勢は、脱炭素化社会の実現に向けた流れがさらなる進展を迎えています。技術的には脱炭素・デジタル技術の進展及びその社会の実装が求められております。
 また、社会全般といたしまして、人口減少、少子高齢化、過疎化の進行が進展しており、現在と中長期のトレンドを両にらみで対応していきます。
 まず足元の緊急的課題への対応としては、この経営環境の急速な悪化を踏まえて、早急に収支、キャッシュフローの改善を図る必要があります。
 そのため、私を本部長とする「2022緊急経営対策本部」を3月に設置しました。強力なリーダーシップのもと、需給運用、燃料調達等あらゆる施策を実行し、修繕費、諸経費の徹底的な削減、投資先の厳選、販売施策の検討等、迅速に実施していきます。
 将来の当社グループの成長に向けた対応については、「脱炭素の推進」、「事業領域の拡大」、「抜本的な収支改善財務体質の強化」この3つのチャレンジを進めていきます。 
 具体的な重点施策となる4本柱「安定供給の確保」、「総合エネルギー事業の競争力強化」、「グループ総力による授業領域の拡大」、「企業文化の進化」ついては従前と変わりありません。

 1つ目の「安定供給の確保」については、まずは志賀原子力発電所の審査に適切に対応し、一日も早い再稼働を目指していきます。火力発電所については、不安定な国際情勢のもと、火力燃料を安定的に調達しながら火力発電設備の安定運転に努めます。送配電設備については、アセットマネジメント手法を活用した更新計画、レジリエンス対応をしっかり進めていきます。 

 2番目の柱「総合エネルギー事業の競争力強化」については、再生可能エネルギー導入等の脱炭素の取組みの中で、カーボンニュートラルへの対応の更なる加速化に向け、昨年公表いたしました「北陸電力グループカーボンニュートラル達成に向けたロードマップ」の目標値を新規に設定し、上方修正しました。
 新規に設定した項目は、「2030年度時点でのCO2排出量を50%以上削減する」です。上方修正した項目は、再エネ開発量で、「2030年代早期に100万キロワット以上増加する」というものです。従前、20億kWh以上としていましたが、目標を明確化するためにkWを併記し、発電量も30億kWhへ増加しました。

 電源側の取組みでは、石炭火力発電所におけるバイオマス混焼拡大に向け、確実に工事を行い運用していきます。
 さらには、先般ご案内申し上げた域外で初めての電源開発である、仙台市におけるバイオマス専焼発電事業をしっかりと立ち上げるなど、電源開発の取組みをしっかりやっていきます。
 
 次にお客さま側の取組みとしては、新たな価値サービス等の展開を目指していきます。再エネ電気料金メニューにつきましても先般、ご案内させていただきましたが、様々なお客さまのニーズにお応えするようなメニューを充実させていきます。これに加え太陽光発電PPAの販売拡大では、太陽光の普及拡大を図りさらに拡大していきます。
 また、燃料・電力価格の高騰の対応として、エネルギー取引部を設置します。需給運用と電力取引および燃料調達を一元的に行う体制とし、安定供給を前提としつつ、燃料・電力価格の高騰にデリバティブの活用も含め、機動的かつ柔軟に対応していきます。 

 3番目の柱が「グループ総力による事業領域の拡大」です。カーボンニュートラル対応のニーズの高まりを踏まえたサービスの展開とお客さまのニーズに合致した新たな付加価値を電気事業の枠を超えて推進していきます。
 代表例としては、石炭火力でのバイオマス混焼拡大に向けて、バイオマス燃料を製造・販売する企業である米国NCT Holdco社との長期売買契約の締結や出資が挙げられます。この出資については、当社の成長が見込めるとともに、我々の燃料の安定的な調達、柔軟な調達が可能になると考えています。
 また、昨年の7月に開始いたしました「EV導入トータルサービス」についても拡充しています。停電時に複数台のEVのみで、無停電で長時間の電力供給が可能となる当社が独自開発したシステムを活用するもので、現在特許を申請中です。これらもサービスに加えながら、お客さまのニーズにお応えしていきます。
 また、金沢エナジーは4月に金沢市の電気発電事業とガス事業を引き継ぎました。デジタルトランスフォーメーションの分野については、江守情報グループを子会社化したメリットを生かし、事業領域の拡大を図りながらお客さまに貢献していきます。 

 最後の柱が「企業文化の進化」です。
地域のITCプラットフォームユニット「結ネット」を活用した電子回覧版など、町内会でご活用いただけるコンテンツについてもしっかり発信していきます。また、地域エネルギー事業への参画として、エネルギーの地産地消や地域活性化に向けた様々なニーズをくみ取りながら、地域エネルギー事業に対応していきます。なお、今年度は南砺エナジーが事業を開始する予定です。 

 足元については燃料価格の高騰や、国際情勢が非常に厳しい状況であり、多くの課題があります。一方で、中長期的に見るとカーボンニュートラルは待ったなしの状況となっています。短期の足元の電力の安定供給と収支対策をしっかりやりつつ、中長期を睨んだ、脱炭素社会の実現に向けた取組みにもしっかり対応していくことは、今年度の大きな課題になると考えています。
 今年度に入りましても厳しい状況が続いておりますが、この両方を睨みながら、しっかり経営を進めていきます。

 私からの説明は以上です。

ページの先頭へ