社長メッセージ

代表取締役社長 社長執行役員 松田 光司

電力の安定供給と財務基盤強化の早期回復を実現し、
3C【Change Chance Challenge】で
お客さま・地域とともに持続的な発展を目指します




 代表取締役社長 社長執行役員  松田 光司


当社グループを取り巻く環境について

   昨年は、ロシアによるウクライナ侵攻に伴い、燃料価格・卸電力市場価格が過去に例を見ない水準まで高騰し、電力供給コストが大幅に増加しました。これを受け、私を本部長とする緊急経営対策本部を立ち上げ、安定供給に支障のない範囲であらゆるコストについて削減・繰延等の見直しを行い、2022年度に140億円の収支改善策を取り纏めるなど、可能な限りの経営効率化を実施しました。しかしながら、経営効率化をはるかに上回るコストの増加により、財務基盤が大きく毀損する事態に陥り、このような状況が続けば燃料調達や設備保全に係る対応が困難となり、安定供給に影響を及ぼす虞があったことから、苦渋の決断ではありましたが、すべてのお客さまの電気料金を値上げさせていただくことといたしました。
 引き続き電力の安定供給という当社の最大の使命を果たし、早期に財務基盤の回復・強化を図るとともに、2050年カーボンニュートラル等の社会変化にも機動的に対応し、お客さま・地域の声に真摯にお応えすることで、持続的な発展を目指します。

ありたい姿の実現に向けて

 当社は2019年に、2030年度までを対象とする北陸電力グループ長期ビジョン(以下、長期ビジョン)を策定しました。ここでは、北陸電力グループのありたい姿を「北陸と共に発展し、新たな価値を全国・海外へ」と定め、「北陸を基盤とした『総合エネルギー事業』の拡大」と「新たな成長事業の開拓」の2つを、実現に向けた基本戦略としています。
 長期ビジョン発表以降、財務基盤が大きく毀損する事態となったことを踏まえ、安定供給確保と、徹底した効率化の追求と事業領域の拡大により収支改善・財務基盤強化を最優先に取り組むことを掲げた新中期経営計画(2023~2027年度)を策定し、特に注力すべき経営の3本柱を設定いたしました。
 1本目の柱は「安定供給確保と収支改善および財務基盤強化」です。カーボンニュートラルの要でもある志賀原子力発電所については、今年3月の審査会合において、敷地内断層が活断層ではないとする当社説明に対し、原子力規制委員会から理解を得ることができました。今後も審査に確実に対応し、地元のご理解を大前提に、早期再稼働に向けて取り組んでまいります。また、水力発電の予測や火力のボイラー制御、電力需要の予測にAI技術を活用することで需給収支の最大化も図っていきます。
 新中期経営計画期間の財務目標として、電力安定供給や、カーボンニュートラル達成等の社会的使命を果たし続けるため、連結経常利益は450億円以上、毀損した財務基盤を整える観点から、連結自己資本比率は20%以上(2027年度末)を目指します。また、資本効率を意識した経営を行う観点から、連結自己資本利益率(ROE)については8%以上を確保してまいります。
 2本目の柱は「地域と一体となった脱炭素化の推進」です。脱炭素社会の実現は当社グループが将来に亘り持続的に成長していくための重要課題であると認識しており、2050年カーボンニュートラル達成に向け、再エネ開発目標「2030年代早期に100万kW以上(30億kWh/年以上、2018年度対比)」という大変チャレンジングな目標を掲げています。石炭火力発電所におけるバイオマス混焼比率の拡大、水力発電所の新設・リパワリングおよび洋上風力発電所をはじめとする電源の脱炭素化や、再エネ電源の大量導入に向けた送配電網の次世代化の対応も進めていくとともに、自治体と連携し、北陸地域の脱炭素化に貢献してまいります。
 3本目の柱「持続的成長に向けた新事業領域の拡大」については、当社グループのリソースや強みを活かし、電気事業だけでなく、その枠を超えた新たな成長の柱を創出することでグループの成長に繋げていきます。電気事業としては、家庭向けのカーボンニュートラルサービスであるEasyシリーズや、法人向けのPPA 販売などの拡大を行っております。また、Actibaseふくいのようなまちづくり事業の開拓などを行っており、今後ますます新規事業を拡大してまいります。
 今後カーボンニュートラル推進や更なる企業価値の向上を図るため、2023 ~27年度で総額1,500億円程度の成長投資を実施いたします。また、投資判断に際しては、事業リスクを勘案しつつ、収益性を重視するために、ROIC等の手法を用いた事業評価により投資を厳選します。なお、本年9月には、投資委員会を設置しました。経営判断の前に、客観的かつ多角的な視点から投資案件の確認・評価を行うとともに、投資の優先度合いを見定めながら、スピード感を持って投資を実施してまいります。

経営基盤を支える取組みの強化

 3本柱への対応を推進していくため、コンプライアンスの徹底・強化等働きやすい職場づくりや、労働生産性の向上に取り組んでまいります。
 昨年度、当社において、一部のお客さま情報の不適切な取扱い事案が発覚しました。今後、このような事案等を発生させないよう、この度副社長を委員長とする「情報適正管理委員会」を新たに設置するなど、再発防止・未然防止策を講じております。今後とも、お客さまから「信頼され選択される北陸電力グループ」であり続けるため、コンプライアンス意識の醸成・徹底に努めてまいります。
 また、目標の達成や各取組みの完遂には、グループ全体の総合力を高めていくことも欠かせません。そのためには、従業員が仕事と家庭の両立や多様な働き方を実現できる環境整備といったDE&Iの推進や、禁煙促進等をはじめとした健康経営など、人的資本を大切にする経営や、DXやIoT活用をはじめとした労働生産性の向上についても、グループ全体で積極的に取り組んでいきたいと考えています。

ステークホルダーの皆さまへ

 当社グループは低廉で良質なエネルギーの安定供給を通じて北陸地域とともに発展してきました。厳しい変革【Change】の中でも、これを機会【Chance】と捉え、北陸地域と共に持続的な成長を遂げるため、果敢に挑戦【Challenge】する3Cに一層取り組み、更なる企業価値の向上と北陸地域への貢献に努めてまいります。ステークホルダーの皆さまには、当社グループの事業活動について、引き続き格別のご支援を賜りますようお願い申し上げます。


2023年11月


代表取締役社長 社長執行役員