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志賀原子力発電所1号機の原子炉手動停止の原因と対策について

平成10年1月26日
北陸電力株式会社

志賀原子力発電所1号機の原子炉手動停止の原因と対策について



 当社志賀原子力発電所1号機(沸騰水型、定格出力54万キロワット)は、定格出力運転中のところ、平成10年1月10日午前8時17分にA、B2台ある復水器のうちB側の出口導電率に上昇がみられました。このため、8時35分から出力降下を開始しましたが、導電率の上昇傾向が継続したため、9時47分に原子炉を手動停止しました。

(平成10年1月10日発表済)



 点検の結果、復水器(B)の細管1本に損傷が確認されました。また、当該復水器細管の上方に設置されている第2給水加熱器(B)の防熱板の一部が破損しており、その破損片と思われる金属片1枚を、細管損傷部近傍の管群上で発見しました。

(平成10年1月12日発表済)



 調査の結果、上記破損片が落下した際に当該細管に衝突し細管が損傷したものと推定しました。
 また、当該給水加熱器防熱板が破損した原因は、設計寸法より短い防熱板取付板が取りつけられ、ずれて溶接されていたことから、当該溶接部に欠陥が生じ、タービンの排気蒸気による圧力変動によりき裂が進展したためと推定しました。
 このため、当該損傷細管については閉止用短管を取り付け、当該給水加熱器防熱板を取り替えることとしました。
 また、復水器内に設置されている他の給水加熱器3台の防熱板についても取り替えることといたしました。
 当社は、今回のトラブルに鑑み、製作施工管理に関する品質保証活動を強化することとします。
 なお、本事象は資源エネルギー庁による国際原子力事象評価尺度(INES)暫定評価では評価対象外とされています。

以 上



解 説

[主要経緯]

 1月10日 8時17分 「復水器(B)ホットウェル出口導電率高」
           警報発報
      8時35分 出力降下開始
      9時47分 原子炉手動停止
   11日 9時30分 復水器内部調査開始
      午 後  漏えい細管1本発見
   12日 午 前  細管上部に金属片1枚を確認
       〃   細管損傷箇所を目視確認
      午 後  損傷細管1本のみであることを確認
       〃   上記金属片が第2給水加熱器(B)の防熱板の
           一部であることを確認
       〃   防熱板破損状況・原因調査開始


[調査の概要]

1.復水器導電率上昇の原因調査

 復水器(B)の全ての復水器細管・管板部についてビニールシート法等による漏えい検査を実施した結果、細管1本に漏えいが認められました。
 復水器(B)蒸気室内部での点検の結果、漏えいが認められた細管に長さ約8mm、幅約1.5mmの損傷を確認しました。
 復水器(B)の細管全数について渦流探傷検査を実施した結果、当該細管の他には異常は認められませんでした。
 また、当該復水器細管の上方に設置されている第2給水加熱器(B)の防熱板の一部が破損(長さ約50cm,幅約20cm)しており、破損片5枚のうち1枚(長さ約30cm,幅約12cm)を細管損傷部近傍の管群上で、その他の破損片全てを当該防熱板と給水加熱器本体との間で発見、回収しました。
 更に、細管の損傷状況、管群上で発見された破損片から細管のチタン成分が検出されたこと等から、細管の損傷原因は第2給水加熱器(B)の防熱板の破損片の一部が落下した際に当該細管に衝突し、損傷に至ったことから海水が漏れ込んだものと推定しました。
 なお、防熱板破損部上方の栓溶接部にき裂が2箇所確認されましたが、当該防熱板破損に伴い、タービン排気蒸気によるあおりを受け発生したものと推定しました。



2.給水加熱器防熱板破損の原因調査

 防熱板破損部について目視点検した結果、設計寸法より短い防熱板取付板が取りつけられていたため、防熱板と防熱板取付板間の栓溶接がずれて溶接されていることが確認されました。
 このため、当該溶接部に欠陥が生じ、欠陥部付近に高い応力が集中し、ここを起点としてき裂が発生、進展しました。当該部分は防熱板の他の部分に較べタービン排気蒸気による圧力変動が大きいことから、き裂の進展が促進され防熱板の一部が破損し、開口が発生しました。この開口部に蒸気が流入したため、さらにき裂の進展が促進され、破損片の脱落に至ったものと推定しました。

 また、浸透探傷検査の結果、第1給水加熱器(A)を除く3台の防熱板取付け栓溶接部に、目視では発見できなかった小さなひびが17箇所(検査総数約1,500箇所)発見されました。
 このひびは、栓溶接施工時の溶接欠陥に起因する疲労によるものと推定されますが、当該部分に加わる応力が小さいことから、き裂の急速な進展はないと推定しています。


3.再発防止対策

 損傷した細管には閉止用短管を取り付けます。
 第2給水加熱器(B)の防熱板は、新品に取り替えます。なお、防熱板の取付けについて施工性等を考慮し、栓溶接からボルト締め方式に変更するとともに板厚を厚くし、強度の向上を図ります。

 また、復水器内の他の3台の給水加熱器防熱板も同様な対策を施したものと交換します。



4.品質保証

 当社は、破損した給水加熱器を製作した会社が納入した機器類について、品質管理記録を点検しており、現在までの点検では給水加熱器以外の他の機器類については、栓溶接部がないことを確認しました。
 今後、引続き他の機器類の健全性を点検、確認いたします。

5.その他

 (1)プラント状況

 原子炉水導電率は、基準値1μS/cmを越えておらず(0.98μS/cmまで上昇)、原子炉冷却材浄化系により、細管漏えい発生後約10時間で漏えい発生前の値(約0.1μS/cm)に復帰しました。



 (2)環境への影響

 既にお知らせした排気筒モニタ、放水放射線モニタのデータから分かるように、外部への放射能の影響はありませんでした。



 (3)定期検査について

 第4回定期検査は計画通り1月17日より開始しており、厳重な品質管理に努めながら実施しています。
 なお、今回のトラブルの再発防止対策工事も実施します。



以上

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